地質の話

土木工学に関わる方々に”地質”の話は不可欠ですが、なかなか分かりにくい様ですのでなるべく平易な表現を心がけると共に、土木屋の方々に説明を求められる事項や基本的な地質現象を説明して参りますので、よろしくお願いいたします。

土木技術者のための本

土木技術者のための「土木地質学」の紹介です。

土木地質学入門
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN4-8067-1118-7.html

この本は、著者である羽田忍氏が名大工学部で行った講義から生まれた本です。

この本の「はじめに」で、「土木技術者の方たちに地質学はどのように土木建設あるいは環境問題にアプローチできるか、といった事柄を書いてあります。」と述べておられる通り、数少ない土木技術者向けの土木地質学の図書の一つといえます。更に、「建設工事は、大地の上で行われているのですから大地についての知識は不可欠で、この本の内容と目的はここにあります。」と述べられておられます。
また、「あとがき」では、ご本人のご経験から「有能な土木屋と接してみると、彼らは、地質学そのものというよりは、その説明で理解される地質構造が、自分のたずさわる建設計画・構造物とどうかかわりあうかを考えることが主要な問題で、地層の成り立ちの歴史から、岩層の強度が地下でどう変化しているか、断層などの分離面・弱線が構造物とどのような関係にあるかなど、自らの頭の中で考察されているようでした。」「現場での地質の説明の中で、質問の多くは、どうしてこのような地質分布となるか、説明の根拠・理由などにかかわるものでした。」と述べられております。

土木屋の方々にとっては、地質屋が土木工学の分野でどんな発想で地質調査を行っているか、地質学的な発想の基本が理解できる本だといえます。また、この本は、地質屋が土木屋へ地質の話をする際の”バイブル”となるものです。

土木工学に関わる方々に、是非読んで頂きたい本としてお勧め致します。

岩盤分類(地山分類)

岩盤からなる地山の岩盤分類(地山分類)は、構成される地質が均質なものと仮定すれば、地形の成り立ちに大きく依存しております。
地形の成り立ちを辿りながら、地山の内部状況(表層から地山深部まで)を最も規制する風化の入り方を考えたいと思います。

一般的な斜面の状況は、下図の様に表されます。
「遷急点」で表される斜面勾配の変換点(斜面上方の勾配より、川側の斜面の勾配が急になる点を言います。)が、この図では3箇所に見られます。

画でみる地形・地質の基礎知識(1996)鹿島出版会,pp.77

画でみる地形・地質の基礎知識(1996)鹿島出版会,pp.77.

この遷急点に着目すると、この河谷の成り立ちが見えてきます。以下の図は、上図の地形が形成される成り立ちを、元々の原面から順を追って①~⑤まで描いてみました。河川が下方に浸食することを下刻と言います。

下刻が進行し②に示したstagr-1になります。
この段階までに、浸食されなかった原面や斜面では風化現象が地表より地山に進行し、河谷付近で最も薄く(新鮮)、頂部で最も厚い風化帯(強風化)が谷地形に沿って形成されます。
この形態が岩盤分類の基本の考え方になります。
原面を浸食し谷斜面を作った境界が、地形変換点(勾配変換点)ですので、ここが遷急点となります。

次の③に示す、stage-2では、同様に河谷により新たな河谷を形成しますので、この谷の遷急点と風化帯が形成されます。この時の風化帯は、stage-2で新たに形成されるものと、既にstage-1で形成されていた風化帯を更に風化させますので二重に風化を被った風化帯が形成されます。
④のstage-3では、風化帯が三層に形成されます。
現在の河谷における風化帯は、⑤に示しました様に河床付近が最も新鮮で斜面上方行くに従って風化が強くなります。

地形の成り立ちと風化帯の形成過程

地形の成り立ちと風化帯の形成過程

上図中の赤色丸・橙色丸・緑色丸は既述の図4-10のそれぞれを示しました。

遷急点が連続したものを「遷急線」と言います。下図にその考え方を示しました。図の赤色線が遷急線です。河谷の斜面で、上方から①の斜面、②の斜面、③の斜面が定義されます。

画でみる地形・地質の基礎知識(1996)鹿島出版会,pp.33

画でみる地形・地質の基礎知識(1996)鹿島出版会,pp.33.

①の斜面が最も古く形成された斜面で、③の斜面が最も新しい斜面となります。浸食や崩壊の面から見ると、③の斜面が最も活発に浸食を受けているので、崩壊地が多く見られます。このことから、斜面②と斜面③の境界線をなす遷急線は、浸食前線とも呼ばれます。
浸食が進行していると言うことは、この斜面に新鮮な岩盤が露出している可能性が高いことになります。

下図には、岩盤斜面の変形とゆるみから見た状況の例を示しました。図の左側が谷ですので、この方向に、即ち重力の報告にたわんでいます。この現象は、クリープとも呼ばれます。急な崖に限らずこうした現象は発生していますので、示しました。表層に近いほど変形量が大きく、ゆるんでいます。岩盤中の亀裂が開きますので、風化を受けやすくなります。ルジオン値は岩盤の透水性を評価するものですが、大きいほど岩盤がゆるんでいることを示します。ゆるみのない、即ち新鮮部でクリープ変形の無い箇所では、当然亀裂が閉じていますので、透水性は極めて低くなります。

岩盤分類 応用地質 特別号(1983)日本応用地質学会,pp.187.

岩盤分類 応用地質 特別号(1983)日本応用地質学会,pp.187.

風化帯の形成には、この変形もおおいに関係しておりますので、地山の状況は既述の風化帯形成の中に、変形の要素も含まれているといえます。
この様な、変形に着目した区分は風化帯分布と整合するのは当然で、地山に沿って斜面上方ほど厚くなっています。

風化帯の分布と地形との関係を下図に示しました。
図の左側が河谷ですので、地山頂部までの斜面の形状は、これまで述べてきた通りです。
ただし、この図には断層や貫入岩脈などの不均質な地質があるため、これらの箇所で独特の風化帯を形成しています。この辺りは機会を改めて述べたいと思います。

表層部を拡大した図も示されておりますが、このことも機会を改めて述べたいと思います。

岩盤地山の風化帯は、河谷部で薄く斜面上方に向かって厚くなり、頂部で最も厚くなります。また、風化帯は、地形なりに形成されていることが分かります。大局的には、谷部で薄く、頂部(尾根部)で厚くなります。

「めざせ!フィールドの達人」-地質調査秘伝の書-(2003)フィールドの達人刊行会,pp.12

「めざせ!フィールドの達人」-地質調査秘伝の書-(2003)フィールドの達人刊行会,pp.12.

以上述べてきたことから、斜面等で実施された調査ボーリングで確認される風化帯を地山全体に広がりを持って示すことが出来る様になります。その事例を以下に示します。

岩盤上の大型構造物基礎(1999)土木学会,pp.87.

岩盤上の大型構造物基礎(1999)土木学会,pp.87.

地形と風化の成り立ちを理解することで、効率的に風化帯を描けた例であるといえます。

風化帯が描けると、岩盤分類はできあがったに等しくなります。
下図には、詳細な調査結果から岩盤分類を実施した事例を示しました。

断面図に示された岩盤区分の境界とその内容の概念
地質学的解釈

岩盤分類 応用地質 特別号(1983)日本応用地質学会,pp.188.

実際の地山は、風化帯で描いた様な岩盤状況では無く、図-28に示された様に、各種の岩盤が混在しております。大局的な見方や、岩盤の性状をどう表現すればよいか等検討の上、図-29の様に、地質学的解釈が行われ、岩盤分類図(地山分類図)が作成されます。
岩盤の見方(図-28から図-29をどう描くか)等については機会を改めて述べたいと思います。

岩盤の見方

岩盤の見方は、大規模な掘削面や大露頭を面前にできる機会がなかなか無いことや、自分が調査した箇所の工事が開始され、調査結果の検証などに立ち会う機会がなかなか得られないことなどを考慮して、既往の文献等から、お話しさせて頂きます。

岩盤分類 応用地質 特別号(1983)日本応用地質学会において、解説「岩盤分類のための地質要素の見方」と題して、羽田忍氏が岩盤の見方について述べておられるので、引用し紹介します。

岩盤分類の目的の章で、
「岩盤分類は、土木構造物の設計と施工に対して、その工事の安全性・施工性・経済性の判断材料として実施されるものである。したがって、工事の対象から離れてただ単に分類することを主眼とした分類は避ける必要がある。」
と明確に述べておられます。
我々地質技術者は、なんのための岩盤分類か初心に戻るべきことを肝に銘じたいと思います。

また、岩盤の実態の章では、
「岩盤は、手にとって見ることのできる”岩石”と異なり、現地においてある一定の方向と広がりをもって存在するものである。
 岩盤は、岩石塊(Intact Rock:岩そのもの)と、割れ目(Cleft:節理・亀裂を含めたもの)の集まりであって、かつ、多くの場合、方向性(異方性)を有し、広がりのあるものである。」
と述べられておられます。
ともすれば、ボーリングコアなどの手近な”岩石”情報に目が行きがちではありますが、「木を見て、森を見ない」ことの無いよう気をつけたいものです。
広がりのあるものを見るわけですから、その様な見方に立つことが必要になります。

岩盤の広がりの大きさの章では、
「岩盤は、局所的あるいは詳細に見れば異質の部分の集合体であって、ある広がりの大きさをとって始めてほぼ均質とみなし得るし、他との比較ができるものである。
中略
新鮮岩盤にも局所的に不良部があり、風化岩盤にも局所的に良好部が残っている。

風化の過程

中略
ボーリングコア観察で、地山を考えずにコアの状況を直接記載し分類する場合は、コア区分である。試掘横坑の壁面で岩盤の状況を観察する場合は、壁面という広がりの中で捉えることが可能であるが、壁面の大きさから考えて、壁面の直接的記載は、横坑区分と称すべきであろう。
・・・・・・・・・・

横坑とボーリングの岩質区分の違い

岩盤区分断面図を完成するためには、ボーリングコアの区分をさらに大まかに取りまとめ、割れ目の変色の具合などを再検討の上、横坑の境界に結びつけることになろう。」
と述べられ、図-23で示された、風化部(点々のハッチのマス)が新鮮部から風化部まで入り込んでいる様子が分かります。実際の岩盤ではもっと複雑な入り方になります。
このことは、この5×5のマス目が1マス=1m×1mとすると、ボーリングコアのみに頼ると、岩盤区分に広がりを考慮しない、区分になりかねないことになります。以下に、広がりを持った見方で決定している岩盤区分が、コア区分に固執すると広がりを持った岩盤区分にならず、同じ評価の岩盤区分になってしまうことを示してみました。ボーリング調査が”点の調査”だと言われる所以であります。

風化の過程

図-24では、横坑(ダムなど規模の大きい地質調査箇所では、スケールを考慮できるように掘削し、その壁面・天端・踏まえなどを観察出来る小規模なトンネル:H=2m程度の掘削断面で最小限の支保工を設置する)で観察する広がりを持った岩盤区分とボーリングコアのコア区分を整合させるために、コア区分をさらに大まかに見る必要性を示しております。
羽田氏の記載にあるコアの変色に着目する方法は、地山全体を見ることで広がりのある岩盤区分が可能になることを示しております。

最後になりますが、羽田氏解説の、
岩盤分類に対する見解と地質家の役割の章では、
「前略
岩盤分類の作業において、まず、最初に着手するのは、地質家による踏査であって、いわゆるハンマーによる横坑内の打診などが実施される。このような地質家の作業においては、調査者の地質学的知識、とくに一般地質学(Historical Geologyに対するPhysical Geology)の素養は大切であって、斜面の地形異常、浸食の過程・岩盤風化、山腹のクリープ現象などから岩盤を観察し理解することが岩盤分類の出発点となろう。
 さらに大切なことは、いたずらに分類に走ることなく、土木構造物に対する基礎知識に照らし、分類の適否を判定する能力も不可欠のものである。この意味で、調査者と設計者が、対象の岩盤を目前にして、充分討論し区分に対する見解を一致させることも大切であろう。」
と締めくくられておられる。
我々地質技術者にとっての、基本事項の大切さが示されており、改めて地質現象の勉強や現場の経験を磨くことがいかに大事か、再認識させられます。

上記の岩盤の見方を更に補足してみたいと思います。
まず、用語の説明を致します。
インタクトな岩(intact rock):割れ目を持たない岩盤のこと。
羽田氏は既述の通り「岩石塊(Intact Rock:岩そのもの)」と説明されております。

割れ目(fractures):あらゆる岩盤にみられるもので、色々な種類とスケールも変化(微少裂っかから普通の裂っか、節理、層理面、そして断層まで)します。
羽田氏は既述の通り「割れ目(Cleft:節理・亀裂を含めたもの)」と説明されております。

不連続面(discontinuity):岩盤が連続したものでないことをしめすために、あらゆる種類の割れ目について用いられます。不連続面の性状や場所や方向性は岩盤特性に深く関わっています。
以下には、花崗岩類の不連続面の例を示してみました。

図で学ぶ岩盤工学の基礎(1991)オーム社,pp.11.

図で学ぶ岩盤工学の基礎(1991)オーム社,pp.11.
分かり易い不連続面を以下に示してみました。

不連続面が長く・短くまさに不連続に分布している

こうした不連続面が長く・短くまさに不連続に分布していることが分かります。

次に、岩盤のスケールについてです。

岩盤地下空洞の設計と施工(1985)土木工学社,pp.98

岩盤地下空洞の設計と施工(1985)土木工学社,pp.98.
この図は、地下空洞を掘削する際に、スケールの違いによって、出現する不連続面の数を模式的に示しております。
この考え方は、ボーリングコアの孔径(通常φ66mmのコアチューブで掘削すると、φ50mmのコアが採取されます)と広がりを持った岩盤とのスケールにも当てはまります。
ボーリングコアが棒状や短棒状であっても、岩盤の中のどこを採取したかによって、評価が異なると言うことです。
次の図も、ボーリング掘削とトンネル掘削を対比して示しています。

図で学ぶ岩盤工学の基礎(1991)オーム社,pp.72.

図で学ぶ岩盤工学の基礎(1991)オーム社,pp.72.
節理間隔に応じて採取されるコアの長さが変化します。

こうした、地山を見るときのスケール感は普段から、工事箇所の切取り法面や採石場の岩壁や大きな崖(露頭)などに接し、よく観察することが大事だと考えております。
何のための調査か、を認識することで、必要なスケール感が自ずと体感出来る様になるものです。

では、具体的にボーリング調査から、地山区分図を作成するまでを、順次進めてみましょう。
斜面で切土が計画され、調査ボーリングが行われ以下の様な結果となりました。

ボーリング調査結果

これだけの情報では、地山の状況は分かりません。
既述の通り、経験を積んだ地質技術者による地表地質踏査を実施しましょう。
幸い、工事計画箇所の周辺に良い露頭があり、詳細な地質情報が得られました。

周辺の地表地質踏査結果

地質の確認ができました。どんな地質が分布して、物性がどうか、風化するとどう変化するのか、などが判断出来ました。普段から見慣れている地質技術者は、露頭で、こうした地質で掘削するとどんなボーリングコアが得られるか、容易に想像出来るものです。
地質構造も認められ、ほぼ水平層であることが分かりました。
断層の存在が明らかになりました。地質構造に大きな変位を与えていないようです。
断層に沿って熱水変質帯が分布しますが、断層の上盤側にのみ変質を与えていました。
断層が切れてから熱水がこの断層に沿って上昇してきましたが、上盤側だけに変質を与えました。
露頭を大きく見ると、風化帯に沿って岩盤の劣化が認められ、帯状をなすことが分かりました。更に、断層に沿って朝顔状の劣化部が見えました。

次に、地表地質踏査による露頭観察の情報から断面図に地質情報を追加しましょう。

総合地質解析による地質断面図

地表地質踏査によってこの地点に伸びる断層(F1断層)が背面に走ることが分かり、断面図上に反映出来ました。ボーリングコアだけでは判断出来なかった、地質構造の解析も可能となりました。
表層からの劣化は風化によるものと判断され、斜面地形に平行な風化帯(尾根状部で厚く、谷部で薄くなる)が順次新鮮になっていきます。
断層に沿って朝顔状の劣化部が存在します。
熱水変質帯の出現の仕方を反映させましょう。
こうした総合地質解析により、以下の地山区分図が完成です。

地山区分図

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最後に、花崗岩類の風化断面を示してみます。

花崗岩の一般的な風化状況

岩盤分類 応用地質 特別号(1983)日本応用地質学会,pp.187.
ここでボーリング調査を実施したら、どんなボーリングコアが採取されるでしょうか?
想像してみて下さい。
逆に、得られたボーリングコアから、上図のような地山状況が想像できますでしょうか?

地山状況⇔ボーリングコア状況

左右相互をとりもつところに、地質技術者=地質家がいるのではないでしょうか。
そうして、土木技術者(設計技術者)とのインターフェースとして、見えない地山の状況を翻訳して、通訳するのが大きな役割と考えております。

遷緩線と被覆層

岩盤分類(地山分類)の項ご紹介した「遷急線」と対をなす、「遷緩線」について述べてみます。
調査や設計時に、大縮尺の地形図を利用出来るケースでは、読図(微地形判読)により多くの有用な情報が手に入ります。

地形を検討する際に、地形界線が用いられます。
遷急線や遷緩線からなる、傾斜変換線が重要な地形界線となります。

既往文献から傾斜変換線について引用してみます。
「個々の傾斜変換線を認定し、それらの形成過程を理解することは地形の理解にとって最も基本的で重要な作業である。」
 ※鈴木(1997)第3章地形の区分・分類・発達史,建設技術者のための地形図読図入門 第1巻 読図の基礎,古今書院,pp.107.

遷緩線は遷緩点の集合と位置付けられます。
この点より下方が緩傾斜となる点が、遷緩点です。
谷地形部や山裾での遷緩線から下方は、被覆層の存在が推定されます。

ここでは入手可能な地形図を用いて説明致します。

会津若松市から南方に10kmほどの会津美里町の大高森山周辺を題材にしてみます。

上図の赤色枠の範囲の地形図を、国土地理院のサイトであるウォッちず地図閲覧サービス
http://watchizu.gsi.go.jp/
からダウンロードしてみます。

大局的な地形を見てみましょう。
大高森山は南西から北東方向に尾根を持つ山体で、南の西の沢と北の戸沢川に挟まれています。
両河川は、ほぼ北東方向に流下しています。
大高森山の北東山麓には、緩傾斜の幅の広い谷が見られます。
また、西北から北方の山腹の標高450m付近に緩やかな平坦面が見られます。
大高森山の山体に目を向けると、標高600m付近に平坦面が見られ、尾根頂部に連続している様に見えます。

今回は遷緩線と被覆層がテーマですので、分かり易い箇所を選択しました。
下図の赤色枠の範囲を拡大しました。

戸沢川の形成した谷と、両岸からこれに合流する支沢が見られます。
谷に着目して、遷緩線を入れてみました。

山腹斜面を基にして描きましたが、支沢と戸沢川の造った谷との境界部にも「遷緩線」が入ります。

先に描いた遷緩線の内側は、各支沢の堆積物分布地と位置付けられます。
黄色で塗色した範囲の遷緩線の内側は、戸沢川が形成した谷に堆積した堆積物分布地と位置付けられます。

この様に、遷緩線に着目した微地形読図は、概略では有りますが被覆層分布地の想定が出来る事になります。
実際には、現地踏査を行って微地形を確認する作業が必要です。

次に、被覆層の分布が見逃されやすい事例をご紹介します。
下図の波線円の中を注目して下さい。
左の赤色枠の中の山腹斜面(黒色波線円の中)が対象です。

右下の黒色枠の中には、既述の通り、遷緩線が僅かですが山腹に入り込んでいます。
ここがポイントです。

こうした箇所を通過する、道路改良工事を想定してみました。
一般的には、大きな切土になる岩盤斜面の地質調査が主体になります。
機械ボーリングもこうした切土予定箇所で、最も切土高が高い箇所で行われることが多いと思われます。
終点側に隣接する谷地形は明瞭ですから、この谷の存在は見逃さないと思われます。

そうすると、切土法面に出現する地質は、下図の通りになり、設計も、これに従って法面勾配や法面保護工が計画される事になります。

上記の遷緩線に注目した調査を行えば、岩盤斜面のみでなく、小規模な谷を渡る可能性を認識出来る事になります。
事前にこうした情報を指摘し、最適な調査を実施すれば、設計施工に大いに有効な提案が可能となります。
起点側に未固結な堆積物を認識した断面概要を下図に示しました。

こうした地形界線の利用方法を、整理してみます。

下図を参照下さい。
同じように見える尾根地形の山腹をA-A’断面とB-B’断面で説明します。

図に示した様に、A-A’断面では、尾根頂部付近に遷急線があり、更に下方に遷緩線があり、谷の遷緩線が出てきます。
下図の右を参照下さい。

B-B’断面では、尾根頂部付近に遷急線があり、更に下方に遷急線があり、谷の遷緩線が出てきます。
下図の左を参照下さい。

上図には、それぞれの地質断面図も記載しました。
遷緩点(遷緩線)から下方には、被覆層の分布が想定されます。

遷緩線の考え方を示してみましたが、等高線に着目して実際に練習をしてみて下さい。
上記でご紹介した、「鈴木(1997)建設技術者のための地形図読図入門 第1巻 読図の基礎,古今書院」には、多くの練習問題が掲載されております。
是非入手されて、読図技術を体得される事をお勧め致します。